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営業コラム

「囲い込み」の落とし穴と「囲い込まない」セールスモデルの可能性~前 編~
ソリューション営業は終わった

今回も営業現場の最新情報をお届けします。

テーマは「囲い込み」についてです。
一般的には顧客をファン化させる、会員化させる、顧客ロイヤリティを高める、といったことに注目されることが多いのですが、「囲い込み」のは囲い込みならではの落とし穴があります。

それでは、是非ご覧ください!!

南谷 恵樹(みなたに けいじゅ)

南谷 恵樹(みなたに けいじゅ)
株式会社セレブリックス
契約アドバイザー

元セレブリックス企画マネージャー。
現セレブリックス契約アドバイザー。
営業販売コンサルティングの企画と開発、営業戦略の立案、リサーチが専門。1967年生まれ。UCLA大学院卒。

「囲い込み」の落とし穴と「囲い込まない」セールスモデルの可能性

⇒後編を読む

顧客との関係をその場限りの関係に終わらせず、継続的に利用してくれる安定顧客を育てていくことは、どの企業にとっても大きな課題です。一般に、リアル店舗では新規顧客のリピート率は3割前後、Eコマースでもリピート率は2~3割が平均値だと言われています。

安定顧客を維持し増やしていく戦略は、しばしば「囲い込み」戦略と呼ばれることがあります。その意図するところは、収益性の高い顧客を継続的な取引に導き、長期間にわたって自社商品を購入してもらい、個客シェア(個々の顧客の中でのシェア)を向上させることによって、最終的にはLTV(顧客生涯価値)、即ち、顧客一人が顧客である全期間を通じて企業にもたらす価値の総計を高めるということでしょう。

顧客が顧客である期間中に、企業にもたらす価値の総計のこと

企業が収益を追求する以上、このこと自体はごく自然で合理的な発想だと言えます。しかし、「囲い込み」という発想には一つの大きな落とし穴があることを知っておくことも大切です。それは、継続的な顧客の育成に注力するあまりに、顧客が他社の商品を含めて商品を自ら自由に選択することを阻もうとする発想が入り込む余地があることです(詳しくは、根来、2002年)。他社の製品やサービスに乗り換えることを強引に阻止しようとしたり、乗り換えると損をするということを正当な根拠なしに強調したりすると、それらは公正さや誠実さを欠いた取引とみなされ、顧客との信頼を損なう結果を招きかねないのです。

取引において売り手が主導権を持っていた時代は過ぎ去ろうとしています。現代の顧客は、自由に情報が検索でき、自由に移動でき、透明性が要求されるインターネットの時代に暮らしています。今や、何をどう購入するかという購買プロセスの多くの部分は売り手ではなく、買い手自身で決められるようになったのです。このような時代であるからこそ、心理的なスイッチングコスト(他社商品に乗り換えることに伴う心理的負担)を課すことは、取引に公正さ、誠実さ、信頼といったものを求める消費者の基本的な価値観に抵触することになります。

購買という行動を、売り手の論理ではなく買い手の視点で理解すれば、買い手は、まず買い物をする時点において正確かつ十分な情報に基づいて自ら最もふさわしい商品を選択し、結果として商品を購入した場合、取引を継続するメリットがあれば継続的にそれを享受したいと考えるでしょう。

この買い手の視点に基づいて、売り手にとっての継続顧客創出のためのロジックを構成するならば、それは、(1)買い手が商品を選択するための十分な情報を提供し、(2)「乗り換え」に伴う心理的負担や物理的負担(機能に互換性がないことなど)を軽減し、その上で、(3)継続すれば得られるメリットを提供する、というステップになるでしょう(根来、前掲論文)。重要なことは、継続メリットの提供は、「十分な情報に基づく自由な選択」を許容するという前提の上ではじめて説得力を持つということです。

顧客が顧客である期間中に、企業にもたらす価値の総計のこと

提供する製品やサービスの質がどれほど優れていても、あるいは提供する価格がどれほど安くても、人間が求める基本的な価値観や欲求(例えば、公正さ、信頼、敬意、正直さ、高潔さ、礼儀正しさ、親しみやすさ)を満たしてくれないビジネスは消費者を引きつけないという事実は、米国のコンサルタント2名が5000人規模の消費者を対象に行った調査でも明らかにされています(クロフォード&マシューズ、2013)。調査結果は、「消費者は常にベストで低価格なものを求めるだろう」という著者らの予想を覆すものでした。

消費者が実際に求めていたのは、(1)価格面では、一時的な激安価格よりも一貫性のある適正価格であり、(2)サービス面では、特別に付加価値の高いサービスというよりも基本的・日常的な要望を満たすことであり、(3)アクセス面では、物理空間的な立地というよりも選択のしやすさであり、(4)体験面では、単なるエンターテイメントではなく、人間らしい扱いや自分に見合った体験であり、(5)商品面では、ベストな商品というよりも、そこそこのクオリティーで「いつも良い」商品だったのです。

つまり特定の商品やサービスの内容(コンテンツ)を問う以前に、消費者はそれらがどのように提供されるかという文脈(コンテクスト)、即ち「提供のされ方」に、いかに人間的な欲求や価値観が反映されているかを気にかけるのです。


【参考サイト】
■根来龍之「囲い込みはCRMではない」富士通総研 Economic Review Vol.6 No.1、 2002年1月。

■フレッド・クロフォード、ライアン・マシューズ『競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略』イースト・プレス、2013年。
注)原著は2001年出版で、原題はThe Myth of Excellence(直訳すると「優越性という神話」)ですが、あの星野リゾートの星野佳路さんが当初より高く評価され、監修者となって最近翻訳されました。

⇒後編を読む

 

さて、今回も営業現場における最新事情をお届けしましたが、如何でしたでしょうか?
世の中の流れに合わせて商品・サービスの提供方法を変えていく必要性がますます高まっています。

営業塾では、新しい営業スタイルを確立させたい!自社の営業組織の見直しをしたい!という企業様のご支援を行っておりますので、コラムを読んで「営業組織を改革したい」と思われた方はお気軽にお問合せ下さい。

今後も定期的に営業マネジメントに役立つ内容をお届けいたしますので、ご期待下さい。
また、こんな内容を取り上げてほしい!こんなテーマのコラムを読みたい!
というご希望があれば、是非ご要望頂ければと思います。





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